米国農務省(USDA)による最新の乳製品年次報告書によると、日本の酪農業界は、進化する生産動向、消費パターンの変化、コスト上昇の影響を受け、依然として厳しい状況にあるといいます。こうした変化は、牛乳、バター、チーズ、その他の乳製品の市場に影響を及ぼしています。
供給面では2024年の生産量は増加、2025年は生産能力が減少すると予想
日本の牛乳生産は、2024年には全国の供給の57%を占める北海道が牽引して増加しました。しかし、搾乳牛頭数の減少により、2025年には減少に転じると予測されています。2022年には子牛の出生数は減少したため、当面は搾乳牛の頭数が減少し、生産量減少に拍車をかけることになるでしょう。
一方、酪農家は例年にない飼料価格の高騰による生産コストの上昇と闘っています。配合飼料のコストは新型コロナウィルス流行前の水準より約40%高いままであり、小規模の酪農家に大きな影響を与えています。2024年には、総酪農家数の約80%を占める、100頭未満の酪農家数が7%減少し、多くの酪農家が財政的な重圧に直面していることが浮き彫りになっています【1】。
需要面:インフレによって弱体化しているものの、依然として需要はあります。
牛乳の需要は下がり続けています。この傾向は新型コロナウィルス感染拡大の時期に始まり、インフレのためその状況が続いています。2024年1月~7月の牛乳の世帯消費量は、消費者が価格上昇を受け入れたため、金額では対前年比6%増加したものの、数量では4%減少という結果となっています。
余剰乳がバター製造に回されるため、バター生産は堅調に推移すると予想されます。円安によるコスト高にもかかわらず、供給のギャップを埋めるために輸入も増加しています。
またチーズの消費量は比較的安定していますが、生産量を大幅に増やすほどではありません。ピザ・レストランを中心とする外食産業が安定した需要の維持に貢献しています。
価格について:乳価はあがっているものの、収益性は依然として低下している状況です。
生産コストの上昇で乳価はあがっているものの、生産コストの上昇による収入の減少を相殺するには至っていません。小規模酪農家にとっては特に厳しい状況となっており、牛乳からの収入だけでは高い経営コストをカバーできない状況になっています。
日本の酪農業は、牛の飼養頭数の減少、消費パターンの変化、生産コストの上昇など、複雑な課題に直面しています。市場がこうした状況に順応していく一方で、サプライチェーンの関係者全体が、収益性を維持するために業務の革新を図る必要があるでしょう。このような状況から、飼料コストを軽減し競争力を維持するために、高品質でありながら費用対効果の高い新たなソリューションを見出すことが重要ではないでしょうか。
2025年には、スペインとイタリアのEU乾燥脱水飼料作物キャンペーンの一環で、日本の業界関係者をEUに招待し、生産地や乾燥脱水プラントを視察していただき、現地の生産方法を理解していただくための研修旅行を実施する予定です。EU乾燥脱水飼料作物に興味のある方は、japan@eufodder.com までご連絡ください。
【1】Dairy and products annual – USDA USDA 酪農業界とその製品に関するレポート